「やる気満々!!」で始めた習い事やお勉強、いつの間にか、「やる気しないな~」「止めたいな~」と思うことってありますよね。
最初はワクワク楽しくやっていたのに、だんだんその気持ちを忘れて、「やらなきゃ」「頑張らなきゃ」・・・「もう、義務感しかない」
いろいろ原因はあると思いますが、もしかしたら「アンダーマイニング効果」が原因の可能性があります。塾の講師や親の一言で子どものやる気がなくなる可能性があります。
アンダーマイニング効果とは、簡単に言うと、「好き」で始めたことなのに、他人がお金などの報酬を与えると、その報酬が目的になってしまい、本来の興味を失ってやる気をなくしてしまうことです。
例えば、A君は動物や魚などが大好きで、水族館や動物園に行ったり、図鑑で知識を増やすのがとても大好きな子供でした。学校でも興味を失わず学んでいたので、理科のテストで100点!それを見たお父さんは嬉しくなってしまい、「A、よくやった!ご褒美に1000円あげよう」といってお小遣いを渡したとします。
A君は次もテストで頑張り、100点。お父さんは、また1000円のお小遣いを渡しました。次もA君は理科のテストで100点。しかし、お父さんは「今月飲み過ぎてお金がないから、お小遣いはあげられないわ、ごめん」A君は「え、お小遣いもらえないの?じゃぁもう勉強する気ないわ」
このように、「好き」や「興味」で始めていたことなのに、いつの間にか「お小遣い」「ご褒美」が目的になってしまうことがあります。ちなみに、「褒める」のも同じだそうです。
もちろん、「必ずこうなる」ということはありませんが、子供の「好き」を消してしまう行動には細心の注意を払いたいですね。
もくじ
アンダーマイニング効果とは
アンダーマイニング効果とは、1971年に心理学者デシ,E.L.とレッパー,M.R.が行ったソマパズル(立体パズル)の実験で証明されたものです。
AとBグループにわけパズルを解いてもらいます。Aグループには、解けたら1ドルの報酬を与えると告げ、実際に与える。Bグループには何もしませんでした。その結果、Aグループはパズルのモチベーションが下がり、Bグループは変わらなかったという実験です。
このように、内的な動機で始めた行為に対して、報酬などの外的動機付けを行うことでやる気が落ちる現象のことを言います。
[st-mybox title=”動機の種類” fontawesome=”fa-check-circle” color=”#757575″ bordercolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#ffffff” borderwidth=”2″ borderradius=”5″ titleweight=”bold” fontsize=””]内的動機付けというのは・・・好奇心、好き、興味などの動機です。
外的動機付けというのは・・・報酬、お金、対価などの見返りの動機です。
[/st-mybox]一般的に内的動機付けの方が、良い結果を生みやすいと言われています。
しかし、先ほどの例のように、物理的報酬を与えられると、今後はもう報酬なしで勉強や仕事をするのがバカらしくなってしまいます。報酬を期待して出たやる気は、その報酬がなくなると消えてしまいますが、それどころか、元々あったやる気(内的動機)までも無くしてしまう危険性があるのです。
英語が「楽しい」を持続するには
先ほどの理科のテストとパズルで共通しているのは、「目的」が、いつの間にか報酬を得るための「手段」になってしまっていた、という点です。
外国語、という未知なる興味に惹かれて英語を学ぶ人も多いと思います。学びたい!英語を話したい!という内的動機付けから始まることが多いです。
それがいつの間にか、受験を突破するための手段になってしまったり、英検が目的になってしまったり・・・ある意味仕方のないことかもしれません。定期テストで90点以上だったらご褒美、のようなこともよくある話かと思います。これはテストで出るぞ!こんな点数じゃ○○高校には入れないぞ!といたるところで言われている中学生に、内的動機は残っているのでしょうか。
仕方のないことではありますが、英語を学習するうえで、英語を話せるようになりたい!外国語を学びたい!というもともとあった内的動機付けを忘れない、思い出せる工夫は必要かと思います。
エンハンシング効果
アンダーマイニング効果と反対を意味するのがエンハンシング効果です。アメリカの心理学者エリザベス・ハーロック氏によって証明されました。
ハーロック氏の実験では、小学生を3グループにわけ、算数のテストをしました。
[st-mybox title=”ハーロックの実験” fontawesome=”fa-check-circle” color=”#757575″ bordercolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#ffffff” borderwidth=”2″ borderradius=”5″ titleweight=”bold” fontsize=””]Aグループは、どんな点数でも、できたところを褒める。 Bグループは、どんな点数でも、できていない部分を叱る Cグループは、何も言わない。
[/st-mybox]結果は、Aグループの成績は71%も上昇。Bグループは、20%近く伸びたが、その後低下傾向。Cは5%の上昇、その後変化なし。
褒めるのが大事だというのがわかりますね。ただし、褒め方には注意が必要です。要は、能力を褒めるのではなく、努力を褒めるのが重要です。
[st-card id=3434 label=”” name=”” bgcolor=”” color=”” readmore=”on”]話は変わりますが、何も言わないグループの成績が伸びない、というのも興味深いですね。マザーテレサが「愛の反対は無関心」と言いましたが、「無視」は、怒る、嫌う、よりもマイナスなのがわかります。
ご飯に「ありがとう」と言い続ける、「バカ」と言い続ける、「無視する」の3通りを一定期間続けると、「無視」したご飯が一番腐ると聞いたことがあります。
まとめると、内的動機を失わないようにするには、小遣いなどの報酬を与えるのではなく、褒める、応援する、のような愛のある言葉が一番、ということでしょうか。
ちなみに、今回ご紹介したアンダーマイニング効果ですが、使い方によっては良い面もあるそうです。
例えば、「ゲーム」を止めさせたい場合。子供は内的動機でゲームをしますよね。そこでお母さんが「お、ゲームやってるね。もう少しでそのポケモンゲットできるね、そこまで進んだら、おやつ出してあげるから頑張って!」
そんなことを繰り返し、だんだんおやつの量を減らしていくと、子供のゲームに対する内的動機は、おやつ(外的動機)に向かうのだとか。私はそんな面倒なことはできませんが(笑)