今回は英語学習に訪れる、2度の危機について書いていきます。英語上達の方法論も大切ですが、メンタル、精神状態は同じように重要です。そういう意味で、とても重要な話になります。今回は、英語学習法ではなく、心構え(マインドセット)中心に書いていきます。

「危機」というのは、モチベーションがなくなり、止めたくなるタイミングです。これを知って学習をスタートするのと知らないで知らないでスタートするのでは、数年後大きな違いがあります。

現在英語学習をされている学生で、「もう英語学習は嫌になってきた」という方にご一読いただきたいと思います。

英語をマスターする、最も大切なこと

まず、前提として、私が考える英語学習にとって最も大切なことについてです。

コツコツ継続できれば、必ず英語はマスターできる

英語学習に最も大切なこと・・それは「継続」です。正しい方法で、途中で止めなければ偏差値が20の人でもできるようになります。

え、当たり前じゃ・・っと思うかもしれませんが、今大人の方だったら、今まで英語学習を継続してきましたでしょうか??恐らく、どこかで止めているかもしれません。中高生は「受験」がありますから、ある程度続きます。それでも、毎日英語に触れて、継続をやめていない方はあまり多くないかもしれません。受験が終わり、高校を卒業して英語学習を止める方も多いかもしれません。

英語学習を短距離走のようにとらえる向きがありますが、英語学習は「マラソン」に似ています。コツコツ走り続ければ誰でもできるようになります。

英語学習に必要な時間~1万時間の法則

心理学者のエリクソンは、のべ1万時間の計画的学習がピアニストやアスリートなど、ほぼすべてのジャンルで効果があると示しました。これはエキスパートになる指標として、「1万時間ルール」として広く知られています。もちろん、1万時間やればいい、というわけではなく、計画的練習を意識する必要があるとの注意がありますが、1万時間は何かをマスターする一つの指標とされています。「熟達化の10年ルール」とも言われます。

1万時間・・というと、1日9時間で3年・・3時間で6年です。一日3時間英語学習に費やせる人は、そう多くないかもしれません。

私は、1万時間ルールは英語学習にも当てはまると思います。学習方法を間違えると、1万時間以上かかる可能性もあります。

義務教育3年と高校3年で英語をマスターしたければ、最低一日3時間の計画的な学習が必要ということです。高校卒業で英語学習がゴールではないので、少なくても2時間は必要になります。え、2時間も!?と思うかもしれませんが、継続する方法はありますので後述します。

1万時間ルールを考えても、どうやってコツコツ「継続」するかがカギになります。

英語学習が継続しない理由~シグモイド曲線

下のグラフの青い線(S字型の線)は「シグモイド曲線」と呼ばれます。スポーツやビジネスでも、成長曲線は「シグモイド曲線」のような曲線をえがくとされています。自分の経験から言っても、英語力も間違いなくシグモイド曲線のように成長します

オレンジの曲線は「理想」です。英語を学習し始めた人は、オレンジの直線のように、やったらやった分伸びていくと錯覚してしまいます。この理想とシグモイド曲線とのギャップで英語学習は苦しくなります。

1度目の危機

シグモイド曲線の下に「1」と書いてある期間があります。これは最初に英語学習を挫折したくなる時期です。

英語力は急に伸びるわけではなく、最初にゆっくり停滞する時期があります。英語を聞いてるけど、読解もリスニングもできない。文法がわからない・・これは誰にでも訪れる段階です。多くの人がこの時期に「英語を聞いても意味ない」「英語なんて読めない」と言って諦めます。

理想のオレンジの線のように、やっただけ伸びるという幻想を抱いていると、そのギャップがさらに追い打ちをかけます。

この時期は英語の暗記も早くできないし、音読も、リーディングもうまくいかない時期です。少ない文章からのコツコツ暗記して頭の中の英語量を増やす、Be動詞、一般動詞の使い分けを、野球の素振りのようにひたすら繰り返す、英語音声のかけ流しなど、地味~な作業をコツコツ続ける時期です。目に見えた結果がでないので、「もう嫌!」となりがちです。

中学生でその後に英語が伸びるか、伸びないかのカギはこの時期にあります

*定期テストなど、短期暗記でどうにかなる学習は少し違うかもしれません。言語として英語をマスターする過程です。

一度目のジャンプ

シグモイド曲線の下の「2」の時期は急激にグラフが伸びているのがわかると思います。

「1」の伸びない時期を乗り切ると、急に「英語が感覚的に読める」「なんかわからないけど、文法がわかる」「まったく暗記ができなかったのに、いつの間にか英語を早く暗記できる」という時期が来ます。人によってどのくらいの期間でジャンプできるかは違いますが、CDの掛けがながし、日ごろの授業の暗記を嫌がらず素直にやる、地味な文法の基礎をバカにせずコツコツ継続している生徒はほぼ間違いなくこのジャンプが訪れます。

中学生でこのジャンプがくると、個人差はありますが中学レベルの英語は楽勝となります。

2度目の危機

次に曲線の「3」の時期です。

一度目のジャンプが来ると、また横ばいの時期がきます。私の経験から言って、この2度目の横ばいは長いです。一度英語力がジャンプすると、伸びない時期がきて、もう英語のかけ流しはいいかな、そんなに英語を読まなくてもいいか、という慢心が生まれます。

ジャンプする前のように学習を続けた生徒も、英語が伸びたのに、なんか伸びが止まった、と感じ、モチベーションが落ちることもあります。もう、今までのようにやっての意味ないか、、、これが2度目の挫折のタイミングです。

この時期は、少し負荷のある学習を課したり、チャレンジのある課題をこなすのが重要になると思います。中学、高校の3年という狭いスパンでみれば、そうすることで伸びます。長いスパンで見ると、この横ばいは長いということです。

この時期を超えると、また次のジャンプがある、と理解し、コツコツと継続するマインドセットが非常に重要となります。

危機を乗り切るために

このように、英語学習は理想と現実のギャップから、何度も止めてしまうタイミングが訪れます。

まず、英語学習はシグモイド曲線のような成長曲線を描くと知っていることが大切になります。伸びない時期があっても、いつかできるようになる、ジャンプが来る、と自分を信じてコツコツ継続するマインドを整えることです。

もう一つは、英語学習のシグモイド曲線を知っている人、経験している人から教わるのをお勧めします。根性でやればやるほど英語はできる、という体育会系の人から教わってしまうと、根性で伸びるかもしれませんが、「継続」できません。

私は20年以上英語学習を継続してきましたが、全く伸びない時期もありましたし、急激に伸びた時期もありました。

伸び悩んでいるときに、「お前の努力が足りないからだ、単語をとりあえず暗記しろ!」なんていう人に教わってしまうと、少なくても私のような、怒られるのが大嫌いで、尚且つ根性無しは必ず続きません。恐らく、3日坊主にもならず、2日で止めます。

1日1時間、確実に継続する具体的な方法

それでは、どうすれば1日1時間、2時間継続できるか、という具体的な話になります。

何度も繰り返しになってしまいますが、一部のど根性体育会系の学生を除き、根性学習は継続に向いていません。コツコツマラソン型の英語学習においては、いかに毎日継続できるかが大事になります。

そのためには、「楽」「楽しい」要素がどうしても重要です。昭和時代の価値観からすると、寝ぼけたことを言ってるんじゃない、「負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、それが大事だ」と大事マンブラザーズも言っていたではないかと反発するでしょう。

しかし、幸運なことに、英語学習はスポーツに比べるととても楽に習得できます。それは「言語」であるためです。

一番手っ取り早いのは留学することです。留学すれば、強制的に毎日が英語漬けになります。それと同じような効果を発揮するのは「CDのかけ流し」です。詳しくは書きませんが、言語にとって、「音」の重要性は常識です。日本語もまずは耳から大量の日本語の音声を聞いて覚えたはずです。そういう意味で、英語をかけながす、という手段は一番「楽~」な方法です。それさえもできません!と言われると、他の方法があるのか・・考えてしまいます。

CDの掛け流しは英語の頭をつくる、という観点では非常に有効な学習です。それだけで1万時間ルールでいう一日の1時間はカウントできます。もちろん、かけ流し「だけ」で英語をマスターするのは不可能です。

同じように、洋楽を聞く、カラオケで洋楽を歌う、字幕なしで映画を見る、海外ドラマを見まくる、ネイティブの友達をつくる、チャットをする、スマホを英語設定にしてしまう、好きな分野の英語の雑誌を読む、なども、立派な英語学習です。根性英語に洗脳されている中学生は教科書とワークだけが英語学習だと誤解してしまいます。やはり、一番のお勧めは英語のCDを流す、という方法です。

もちろん、学生ですので机での学習も必要でしょう。それでも、私の塾で言えば、30分で終わる宿題だけです。あとはCDのかけ流しのみです。週1の授業の3時間はみっちりやりますが…授業の暗記や音読、演習を素直にやる中学生には英語力のジャンプが訪れています。

そう考えると、1日1、2時間の継続、意外に簡単に思えないでしょうか??

学校英語の本当の問題点

私の偏見かもしれませんし、根拠があるのか!と怒られるかもしれませんが、学校の英語は先ほどのグラフのオレンジの直線を追い求める英語学習であると私には感じます。

単語一覧を夏休み中に丸暗記しろ、構文を暗記しろ、テストに出るから覚えろ、頑張れ、根性出せば成績は伸びる!・・・あまり「継続」に意識が向いていない気がしてなりません。英語は鉢巻を巻いて学ぶものではないと思います。

もっと肩の力を抜いて、らく~~に考えないと、高校入試が終わったら英語は終わり!英検が受かれば終わり!となってしまう気がします。

私の友人のマレーシア人は、英語がペラペラ。どんな英語教育を受けてきたのか、興味津々で聞いてみますが、私たちと大した違いはありません。ただ、日ごろから英語の音楽を聴いて、映画は字幕なしで見ていますし、情報は英字新聞から得ています。海外の友人も多く、英語を日常的に使ってきたそうです。

生活の一部に英語があるようになれば、大人になっても英語学習は続き、英語ができる日本人が増える未来がくるかもしれません。