個人的に「宿題」はあまり好きではありません。誰かにやらされる勉強は嫌いですし、残業のようなものだと思うからです。

子供が宿題を持って帰ってきて、「やりたくないな~」と言っているのをみて、あぁ、こうやって学びが「強制的なもの」とインプットされるんだな・・と思ってしまいます。ですので、宿題しなさい、とは言わないようにしています。恐ろしいことに、宿題による、学びは強制で辛いもの…という洗脳は大人になってもとけません。大人になって大学に通う日本人は少ないですし、子供の教育にはお金を払っても、自分のためにお金を払って勉強する大人は少ないと思います。

だからと言って、宿題を全くなくせばいい、というのも極端な気もします。家庭での学習が増えればテストの成績が上がるのは事実でしょう。

この「宿題をめぐっての論争」は結論が出ないかもしれません。今回はアメリカを例に、宿題について書いてみます。

参照:Is Homework Good for Kids? Here’s What the Research Says(宿題は子供にとって良いか。研究者の見解)2016 TIME誌

実際に宿題を廃止したアメリカの小学校

私のように、宿題をあまり出してほしくない!と思う保護者は少数派かもしれません。

しかし、アメリカではテキサスの先生が学校の宿題廃止を掲げ、賛同する保護者によってネットで拡散されたそうです。

宿題廃止を言いだしたBrandy Youngさんが保護者に言った内容は「宿題をする代わりに、家で家族と夕食をとり、外で遊び、早く寝てください」この理由で学校公認で宿題を廃止するあたり、アメリカは面白いですね。いい学校です。

一方で、学業に悪い影響があるのではないか‥と不安視する保護者も多いようです。

アメリカの宿題問題

TIME誌によると、アメリカでは宿題の基本が決められていて、「学年につき10分」がスタンダードのようです。例えば、小1だと10分、小2だと20分…高校生は2時間、と言った具体のようです。PTAもこのガイドラインには賛成しているようです。

一方で、先ほどのテキサスの先生のように、このガイドラインに待ったをかける学校もあります。マサチューセッツ州の小学校は、宿題をなくす代わりに教室での活動を増やし、脳を疲れさせて家に帰らせる試みをしているそうです。マサチューセッツの小学校のジャッキー校長は、「私は子供たちに家族との時間を楽しんで、サッカーとかの練習に行って早く寝てほしいだけです」とインタビューに答えています。

ニューヨークの公立小学校でも、家族との時間を優先するために同様の試みを導入し、怒った保護者もいたようですが、多くの教育者からの賛同も得たそうです。

このように、アメリカでは地域によって独自に宿題に対する対策をしていますが、専門家の意見も対立していることから、議論を複雑にしているようです。

宿題研究者の見解

それでは、宿題について研究しているリサーチャーの意見はどうでしょう。

宿題研究の権威、デューク大学のハリス・クーパー教授によると、宿題の効果は年齢によって変わるそうです。教授によると、中学、高校生は宿題と学力は相関関係が見られますが、小学生は宿題と学力の関係はほとんど無いそうです。

しかし重要なのは、低学年の宿題と学力の相関関係はないとはいえ、クーパー氏は宿題を全否定はしていません。小学2年生に2時間の宿題をさせるのは良くないですが、「全く宿題を与えない」のも良くないと結論付けています。

一方で、クーパー氏の理論に反対する専門家もいます。

例えば、ミズーリ大学セントルイス校のキャシー・バッターロット氏は、「小学生の宿題が生徒の役に立つなんていう証拠は全くなく、小学4,5年生までは宿題を全くやらなくても問題ない」と言っています。彼女は宿題の質にフォーカスすべきとも述べています。アリゾナ大学のエタ・クラロベック氏も「小学校レベルでは宿題の利点はまるでない」と言い切っています。

宿題反対派にの理由としてあげられるのは…①学校に対するネガティブな態度を生む ②「宿題しなさい」の声掛けで親子関係に歪が生まれる ③宿題で自立心が育つのはある程度の年齢にいってから。小学生は「宿題しなさい」と言われることで逆に自立心を奪われる。 ④体を動かしたり、スポーツしたり、「子供らしい」子供になれない。 ⑤学校で集中するための休む時間を奪われる・・・といったところです。(Research Finds The Effects Of Homework On Elementary School Students, And The Results Are Surprisingより。)

小学生のうちは宿題と学力向上は関係ない、というのはクーパーさんも他の人も同じですね。小学生のお子様をお持ちの方で、「宿題をやらない子供にカリカリする!」という方は、宿題はやらせなくてもよい、などと極論は言いませんが小学生が宿題をしようがしまいが学力に影響はなさそうなのが研究結果として出てますので、安心して、あまりイライラせずにリラックスしましょう。

ところで、この「宿題論争」は何十年も繰り返されているようです。面白いのは1999年のTIME誌の表紙も「Too much homework!…(宿題多すぎ!)」今と似ているんですね。一方で、1957年にスプートニク号が打ち上げられたときに、アメリカでは国際競争に勝つために教育に力を入れなくてはならない、ということで宿題が増えたそうです。その時代はまさにToo little homework! (宿題少なすぎ!)という時代だったんですね。時代背景によって、宿題論争は変わるようです。

結局、宿題は必要なのか…

というわけで、クーパーさんはうまい具合にまとめています。「宿題って、病院の薬や毎日のサプリメントのようなものです。毎日ほとんどサプリを摂らなかったら効果はゼロですし、薬とかサプリを大量摂取したら死んでしまいます。適量をとれば健康だよね!」

宿題研究の権威が出した結論は意外にもシンプル。適量が難しいですね。ちなみに、本田塾では、小学生は「CDのかけ流しだけ」です。こないだ5級をとった小学生は「家ではゲームしてるときにCD流してただけ~」と豪語してました。

中学生以上は宿題は学力に関係すると研究でも結果が出ているようですし、それは頷けます。中学生には英語のかけ流しの他に、文法問題を少し宿題として出します。宿題に関しては、やってこなかったら私の責任、と思っているので、やってこないからと言って怒ったり説教したりはしません。この理由はこちらの記事で書いています

中学生にはワークの宿題は忘れても、かけ流しだけは忘れないようにお願いしてます。この見えない宿題が大事なんです。

何はともあれ、冒頭に書いたように宿題は「残業」と思っているので、中学生は授業時間が長い分、必要なことは授業内で終われるようにやっています。薬をやたら出す病院が良くないように、宿題が多ければいい、という塾も良くない、というのが私の考えです。