よく、長く一緒にいると夫婦の性格が似てきたり、親しい友達と仕草や口調が似てきたり、ということってありますよね。他にも、スポーツが好きなだと、好きなスポーツ選手を見入っていると、その選手の動きに似た動きをしたり、という経験もあるかと思います。

「シンクロニー」と「ミラーニューロン」

この、「近くにいる人に似てくる」という現象は心理学では「シンクロニー」と呼ばれるそうです。シンクロナイズドスイミングの「シンクロ」ですね。

実は、この「シンクロニー」は脳科学でも証明されています。人の脳には、「ミラーニューロン」という神経細胞があるそうです。これは、他者の行動を自分の脳内で「鏡(ミラー)」のように写し出す神経細胞で、約20年前にイタリアの大学で発見されたそうです。当時の神経科学者たちの間では、DNAに匹敵する発見として注目を浴びたようです。

ミラーニューロンと塾の先生

この「近くにいる人間と似た人間になる」というのが「ミラーニューロン」によって証明されるのであれば、「こうなりたい」という人の近くにいれば良いということになりますよね。

ですので、小・中学生なら、勉強が好きになりたい。勉強ができるようになりたい。大人になっても学びを止めない人になりたい。人間的に成長したい・・・そう思うなら、それを実際にやっている人から学ぶのが一番の近道だと思います。

そう考えると、塾の講師、もしくは学校の先生という立場も重いと思うのです。もし、塾の講師が、学びなどの自己投資よりも、ゲームや飲み食い、趣味などの消費を優先する。勉強は辛いものだから、根性で我慢してやるものだと思っている。勉強を頑張ってから、自分の楽しみに時間を使いましょうという価値観を持っている、生活態度が悪い・・・などの軸で生活しているのなら、子供は影響されて同じような人間になるということが脳科学で証明されていると言い換えることができます

子供が宿題をやらない。勉強しない。

ですので、子供が勉強をやりたがらない、宿題をしない。そんな時、「なんで宿題をやってこないんだ!!頑張れ!」といって怒るのは間違いだと私は思います。きれいごとに聞こえるかもしれませんが、そんな時は、「自分が学ぶ姿勢をみせているのか」と自分の責任と考えるべきだと私は思います。

教える人間が「勉強はツライよ~頑張らないとね」なんて言っていれば、教わる側もそうなりますし、「休みの日は寝て過ごします」なんて言いながら、生徒には「受験生なら休みの日も勉強しろ」なんていうのはミラーニューロン的にもおかしいですね。「勉強は贅沢品で、楽しいもの」「学びは自分を高める最高に楽しいもの」と思って学び続ければ、生徒もそうなるのかな~って私は思います。

同じように、「がんばってないからダメなんだよ」というのも間違いだと思います。その人は頑張った結果そこにいるわけですから、そのうえで「頑張りなさい」といのはストレスになります。生徒のせいにせず、「自分のせい」と考えなければならないと思います。Loveの語源で書いた通り、生徒に対しては聴いて、長い目で見て、声をかけ、ゆるすという姿勢も大事ですし、塾講師も自己投資して学び続ける必要がありますね。

親の役割

子供と長い時間を過ごすのはもちろんお父さんお母さんですね。子供がミラーニューロンで両親と同調するのは否定できませんよね。

そこで、「やばい経済学」という本にある面白い実験結果を紹介します。

この本のレヴィットさん、親の教育と学校の成績の相関関係を統計的に調べたのです。レヴィットさんによると…

【試験の成績と強く相関アリ項目】

親の教育水準が高い
親の社会・経済的地位が高い
母親は最初の子供を生んだとき30歳以上だった
生まれたときに未熟児だった(負の相関)
親は家で英語を話す。
養子である(負の相関)
親がPTAの活動をやっている
家に本がたくさんある(読まなくてもたくさんあることに意味がある)

【試験の成績と相関ナシ項目】

家族関係が保たれている
最近より良い界隈に引っ越した
その子が生まれてから幼稚園に入るまで母親は仕事に就かなかった
ヘッドスタートプログラムに参加した
親はその子をよく美術館へ連れて行く
よく親にぶたれる
テレビをよく見る
ほとんど毎日親が本を読んでくれる

面白いのは、最後の項目です。親が本を読んでくれたかどうかは、学力と関係がないようです!それよりも、家に本がたくさんあるほうが学力に関係があるのだとか…

つまり、親が何をしたか、ではなく、「親がどうあるか」が子供にとって重要だということです。

ミラーニューロンの話と繋がる気がします。