時制の一致というややこしいルールが英語にはあります。
時制の一致を簡単に言うと、I thought that he *is cool. 私は、彼がクールだと思った。 という時、思った(thought)が過去の場合、he is cool も過去にして、he was cool としなければならない、というもの。
この法則を知っていると、少し混乱するのが、「仮定法」の場合です。そもそも、時制の一致、などという、本来は存在しないルールを信じてしまうから混乱するのですが・・
もくじ
仮定法の時制の一致
結論から言うと、仮定法というのは、「時間」を超越している(実際の時を表さない)ので、時制の一致で変化しません。現在・過去・未来というものとは関係ないものです。
なので、例えば,TOEICなどの問題で・・
( )に入る動詞の形を選びなさい
The doctor suggested that Mike ( )drinking coffee. 医者は、マイクに、コーヒーを飲むのをやめるように提案した。
A.has stopped B. stop C. stopped D. will stop
という問題があったら、「時制の一致」というルールを知っている人は、suggested が過去だから、もちろん、stopも過去に合わせて、stopped の「C」が正解でしょ!
と、思ってしまいます。けれど、これは「B」が正解です。
理由は、先ほど書いた通り、仮定法は時制の一致を受けないからです。この文は、「仮定法現在」の文なので、原形のstopを使います。
仮定法現在については
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そもそも、「仮定法」というのは、時制をずらして、「あり得ない感」を出す表現です。もともと、「今」の事を言う時もIf I were などと時制を過去にするような荒くれ者が、時制の一致だからと言って、急にマジメになってルール通り従うのも変な話です。仮定法は、時制のルールを守らず、荒くれ者になることで、「あり得ない感」を出します。
とはいえ、文法に詳しい高校生でも、英作文などをすると、時制を変えてしまうことがあります。
もしお金があれば、そのパソコンが買えるのになぁ。と彼は思った。という文を書くとき、仮定法は時制の一致がないので、
He thought that if he had much money, he could buy the computer. もしお金があれば、そのパソコンが買えるのになぁ、と彼は思った。
「思った」のは「過去」でも、「現在の仮定」(仮定法過去)を使って書くべきなのですが、
考えた「though」のは過去。では、Ifの節も、「過去に対する仮定にして、仮定法過去完了にしなければならない!」と思ってしまいがちです。
He though that if he had had much money, he could have bought the computer. たくさんお金を持っていたら、そのパソコンを買えたのに、と彼は思った
というように、仮定法過去完了にしてしまいます。
そうすると、「彼は、たくさんお金を持っていたら、そのパソコンを買えたのに・・と思った」という、違う意味になっていまいます。
仮定法の時制の一致は「例外」ではない。英語の時制は「現在」が基準
そもそも、こちらの記事でも書いていますが、「時制の一致」というものは、存在しません。
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ですので、今回紹介したこれは「例外」ではありません。
なぜなら、英語の時制は「現在」が基準だからです。
先ほどの文だと、He thought that if he had much money, he could buy the computer. のthought (思った)という時点を基準にしていますが、基本的に英語は「現在」が基準です。
ですので、「現在」から見て、思ったのは「過去」。たくさんお金を持っていたら・・というのは、「現在」の仮定(仮定法過去)、という事に過ぎません。
He though that if he had had much money, he could have bought the computer.だったら、思った(thought)のは「過去」。お金があったら・・と思ったのも、過去(今はお金がある)ので、過去の仮定(仮定法過去完了)を使っている、ということです。
「現在」視点で考えれば、時制の例外はほとんどが例外ではなくなります。