英語の読解、と聞いて思い浮かべるのは、英文法、構造の理解・・などなど、読解のコツを見つけるのは難しく、苦手にしている生徒も多いと思います。習得するためには、予備校のように難しい講義を聞いて習得するもの、って思いますよね。

私も、そう思ってました。実際、文の構造をわかりやすく分解して「教える」のがいい英語の先生と思っていたんです。家庭教師をやっている時は特にそうでした。英文を分解し、主語、動詞などと分け、理論的に読んでいくやり方です。この方法は、高校生や浪人生の、認識力が高い学生には効果が高く、実際飛躍的に英文が読めるようになる生徒もおりました。しかし、中学生や英語が嫌いな生徒には、あまり使えませんでした。

個人的に思うのが、このような学習法は英語に「ついて」学んでいるにすぎず、英語そのものを学んでいないのでは・・と思ってしまうのです。英語の知識は増えるでしょうが、完全に「日本語モード」で英語を学んでいるにすぎないと思います。

くれぐれも誤解のないように言っておきますが、そのような訳読式の教授法が悪いというわけではありません。一定の年齢以上では、文法を正しく学ぶのは必要ですし、読解の助けになるのは間違いありません。何事もバランスが大事だと思います。

ちなみに、他に中学生が勧められる方法として、「スラッシュリーディング」という、英文に/を入れながら読む方法があります。個人的な意見ですが、この方法はセンテンス全体を見渡すことができづらいので私はお勧めしません。第一、この先、英字新聞などを読むときに、いちいち斜線を入れながら読めませんし、パソコンやタブレットで英語を読むときはどうするの?って思います。私が教えている生徒にスラッシュ付きの英語を見せたら、「スラッシュが邪魔です。」と言っていました。

訳読式は確かに私も浪人時代に助けられましたし、いい方法ではあると思うのですが、中学生のような若い時期(高校生も大人もですが)には、何か他の読み方があるはず・・と思っていました。ウザワシステムを取り入れてから、その「何か」に気づかされました。

魔法のような読解法が存在する

ウザワシステムを導入した2年前は、訳の仕方は「足し算の訳」というのが主流でした。英語の訳を足し算のように足しこんでいくやり方です。(詳しくはこちら)足し算の訳も、初心者の小学生、中学生がどんな難しい英文も訳せるだけでなく、英語の語順の感覚を身につけられる方法として、私にとって画期的と言える方法でした。

しかし、鵜沢先生の探求心は衰えることを知らず、最近は、「何度も音読するうちに意味が取れる方法」を発案されました。

正直な話、訳読式で育った古い人間の私にとって、「本当にそんなことがあるのかな・・」と思いました。これが本当にできたら、魔法のようだと思ったのです。恐らく、保護者の方に説明しても、私と同じような気持ちになると思います。言い換えれば、私のような人間にはおよそ考えつかない方法です。40年以上、実際の英語教育現に携わり、探求し続けてきた方だから考えつく方法です

明らかに読み方が変わった

「いいこと聞いたら、すぐ行動」が私のモットーなので、すぐに小・中学生に試しました。印象的だったのは中学生の読解です。真面目に言われたことを忠実にこなす生徒で、CDを毎日かけ流し、足し算の訳も忠実にやってきていました。しかし、忠実にやってくれる生徒だからこそ、毎回機械的に足し算で訳をしていました。足し算で英語の語順感覚は何となくつかめていたようですが、頭からスラスラ意味を取れるレベルにはなっておりませんでした。入会してから日が浅いのも一因だと思うのですが、何となくパズルのように訳をしているイメージが拭い切れませんでした。

その生徒に、何度も読んで訳す方法を試してみました。訳させよう、とするのではなく、英文を何度も音読し、何となく意味を言うように促しました。その間、「このtoは不定詞の形容詞用法で、ここまでが主語になって、動詞はこれで・・」と、説明したくなるのをグッと抑え、音読する様子を見守ってみました。やり方が変わったので困惑しておりましたが、何度も音読するうちに、「あっ」とひらめいたような表情をし、「わかったかもしれません!」という生徒。すると、すらすらっと意味を言っていました。

高校生が読むような難しい英語なのにもかかわらず、単語の意味は与えましたが、文法的な説明を一切せずに、意味を取ったことに、本人も私も不思議な気分でした。正確に理解できているわけではなくても、文章全体を何となく理解できているようです。今では、今までの長文アレルギーがなくなり、模試の長文は全く問題なく満点を取っています。今まで自分が信じていたのは何だったのか・・大袈裟ではなく、目から鱗とはまさにこの事です。

こんなことを書くと、「信じられない」「オカルトみたい」「塾ブログに誇大広告のようなことを書くな」と思われるでしょうが、実際にあったことです。小学生はもっと早く実証できました。

実際、英語を読むときって、いちいち日本語に訳しながら読まないので、感覚的に意味を取れる方法として、非常に期待しています。

人間は生まれながら語学の天才

そもそも、人間は生まれながら語学の天才として生まれています。鵜沢先生は、我々の遺伝子には、どんな言語でも意味が取れる装置があるという旨を仰っておりました。

そのようなことを聞くと、チョムスキーさんの「普遍文法」を思い起こします。私は言語学者を目指しているわけではないので詳しくは書けませんが、普遍文法というのは、「人間の脳には文法を学ぶための『ひな型』が組み込まれている」という理論だそうです。

日経サイエンスの記事を読むと、最近はチョムスキーさんの理論は下火になってきて、今は「子供は一般的な認知能力や他者の意図を理解する能力を用いて言語を習得していくという見方」(用法基盤モデル)という理論が注目されているのだとか。つまり、子供が耳にした文や語句から一般化していくような理論だそうです。こういうのに、ちょっと興味が出てきたので、これからちょっと学んでみようと思います。

普遍文法も、用法基盤モデルも、比較できるものではないような気がしますが、個人的にはチョムスキーさんの普遍文法理論にロマンを感じます。

魔法のような読解を可能にする「カギ」は

いずれにせよ、両者とも生得的言語獲得能力は否定はしていないようなので、鵜沢先生の仰るように、人間が他の動物とは違い、言語を身につける能力があるのは確かなようです。

仮に用法基盤モデルが正しいとすると、用法基盤モデルのためには言語習得のためにはインプット、リスニングなどの言語刺激が必要だとするなら、ウザワのCDのかけ流しと授業での暗唱、日本語のレベルにあった英語の本を与える、というのが理にかなった方法だと言えると思います。

まさに、CDのかけ流しと音読が音読で意味を取る方法のカギです。これなしに成り立たない方法なのが不思議です。

知識を教えるのが英語教育ではない

まだまだ、ウザワシステムを始めたばかりの私にとって、英語教育の旅の途中です。鵜沢先生はじめ、ウザワシステムを長くやられている先輩方からは、まだまだ遠く離れた存在です。ただ、人間本来の能力に着目し、それを引き出す、という意味は理解してきたと思います。

訳読式で教えていた家庭教師時代は、「自分がこの生徒の英語力を上げよう」と一生懸命になっていました。わかりやすく解説して、教えなければならない、暗記させなければならない、と思いながら、できない生徒を、できる生徒に「変えよう」と思っていたのです。今はもう少し緩く考えています。英語をできるように変えるのではなく、もともと能力があるのだから、それを信じて引き出せばいいだけだ、と思っています。今回の訳の方法は、そのことにハッキリ気づかせてくれました。

「もともと凄い能力を持っている」という目で子供を見ると、接し方も変わってきます。今はもちろん英語ができなくても、この子は天才だから、将来的に私を超えるんだとうなぁと楽しみながらやっています。